2014年6月11日水曜日

お花畑クッキー


あるパーティーの為に、先日ハーブのブーケを送ってもらった炭素循環農法で肥料も農薬も使わずにハーブを育てておられる、兵庫のまるふく農園さんから、エディブル・フラワーやハーブをたっぷりあしらったクッキーを取り寄せた。

材料は国産小麦粉、ざらめ、卵、ハーブだけ。素朴だけど味わい深いざっくりとしたクッキーでとても美味しい。

見た目もご覧のように、ワクワクするような素敵さです♡


ところで私はオーガニックや無添加の物を好む人間ですが、そういう物を食べなければ人間はどうにかなっちゃう、と信じているわけではありません。
何故なら私は素材以上に、人間が何かを創り上げる時に生じる、錬金術的な魔法の力を信じているからです。

だから逆に、どんなに厳選された安心安全な素材を使って創られた物でも、作り手がリジットで排他的な心、例えば、マクロビオティックをやらない人間はアホだとか、ビーガンじゃない人間は野蛮だ、というような心を持っていると、そこに素敵な錬金術は作用しないんじゃないかな、と思うわけです。
同様に、おざなりな気分で創られた物にも。

だから素材に関わらず、丁寧に創られた物が好きだし、宝石みたいなデザインを施された美しいスイーツなんかも大好きです。


以前エッセイ漫画に描いたことがあるので覚えてくださっている方もいらっしゃるかもしれませんが、アメリカでローフード・シェフをやっている知人がいて、彼の主張は、とにかく色彩なのです)笑。

野菜や果物の色彩にこそエネルギーが宿ると信じる彼の料理は、まさにサイケな色彩の魔術。

人間は、四季の彩りを目と口から接種する事で、その滋養を完全に取り入れる事が出来ると主張する彼の存在感はいささかエキセントリックで極端な印象ではあったけれど、どんなに強烈な言葉を使っていても、彼が食材を触り愛でる姿には、胸を打たれる真摯さがあり、出て来る料理も、その美しさは言うに及ばず、とにかく優しくて美味しくて、私はその時患っていた、高山病による頭痛があっという間に消えてしまったりしたのです。

そう伝えると彼は、ほらね、食材の"色"は、すごいんだよ、と目を輝かせていましたが、私は心の中で、いやいや、あなたの料理と客への愛情が、こんな魔法を生んだんだよ、思ったものです。

真相は定かではありませんが、とにかく私は人が、丁寧な心でじっくりと生み出す物が大好き。

私もまたそんな作り手になりたいと思って、最近ではややせっかち気味だった心を抑え、ひとうひとつの作品や計画に、自分の納得出来る時間を、じっくりとかけることにしてみています。

2014年6月2日月曜日

ソプラノズ


昔からファンなんである。

私はストーリーを創る仕事をしているので、特に私の個性では書けないようなタイプの話で、そして脚本が素晴らしいとなると、本当にのめり込んでしまう。

このソプラノズは観るたびに、一体誰がこんな脚本書いてるの、と思ってしまうのです。

私がもう何年も前にこのドラマを観始めたのは、3シーズン目くらいからで、始めの頃の話を知らなかったのだけど、最近ネットの配信で初期の頃のシーズンを観る事が出来る様になったので、美味しいお菓子を一個ずつ楽しむように、少しずつ大切に観ている。

昨日は一日の予定が大変すみやかに済んだ上に、成功報酬をあげてもよいような出来事があったので、夜遅くに帰宅してから、ソプラノズに手を伸ばした。


昨日観た話も、めっちゃおもしろかったです!!

とにかくこのドラマは、マフィアのドラマだから、出て来る人たちが全員ろくでもない。

主人公のトニー・ソプラノは幹部クラスのマフィアで、ふたりのティーンエイジャーの子供と奥さんと共に、プール付きの、結構な屋敷に住んでいる。

話は主に、家族関係やマフィアの人間関係や事件を中心に描かれるのだけど、何が面白いって、ひとりひとりの性格が、大変詳細に設定されていることが面白いのだ。

基本的にトニーの率いているマフィア・ファミリーの人たちは、その家族に及ぶまで、みんな情に厚くて善人である。
しかしここで、何を持って善人と呼ぶか、という点においては、多分一般社会におけるモラルを基準にした価値観とは著しく異なる。

何故なら彼らはマフィアなので、ごく日常的に犯罪的な裏家業で金儲けをし、都合の悪い奴はケすからだ。

そう、このドラマでは、普通の、家族を愛し近所付き合いに気を使う一家の大黒柱が、いとも簡単に人を殺したり殺されかかったりする。

もちろんドラマの背景ではFBIが必死になって、トニーの尻尾を捕まえようと色んな策を講じる様子も頻繁に描かれている。
彼らはアメリカの法治国家の中にいて、巧みに犯罪を繰り返して生き伸びていて、しかしそれがあんまり大きな問題としては、このドラマでは描かれない。

このドラマで問題になるのは、あくまでもトニーの個人的苦悩、ファミリーのメンバーの個人的苦悩、家族の個人的苦悩で、大変重苦しい苦悩の中で、みんな生きているのです。
その苦悩の有様が、実に丁寧な性格描写で描かれているのである。


昨日私が観た回では、トニーの愛甥クリストファーが銃で撃たれ、ICUで一時心停止となる。クリストファーはその臨死体験中に地獄へ行って(笑、既に他界していたファミリー数人が、緑色の悪魔とギャンブルに興じているのを目撃するのです。

その、亡きファミリーから、トニーとその相棒ポーリーへの伝言を受け取って、回復します。その伝言は、ひとこと、「3時。」

当然、「おい、3時ってなんなんだ。」って話になりますよね。
強面のトニー(写真真ん中)とポーリー(写真右)は、そう見えて実はとっても繊細。

特にポーリーは、このドラマ・シリーズの後半で大変興味深い神秘体験をするというエピがあるほど、たいへん信心深い性格です。
まあ、信心深いんですけれど、特に臆病で、ですので、ファミリーの中では比較的衝動的に人を殺したりしてしまいます。

恐れの強い人というのは、防衛心も強いので、過剰な防衛意識によってやったら攻撃的になる、という、セオリー通りの男なのです笑。

クリストファーから聞いた話によって密かに動揺したふたりは、それぞれの解決策を取ります。


トニーはセラピーへ。
ポーリーは、愛人から薦められた霊能者の元へ行き、「3時」の意味をクリアにしようと画策するのです。


いやー、面白かった。

このドラマは、決してコメディではありません。

キリスト教など、伝統宗教に縛られない日本という国で生きていると、地獄とか神様とかいう存在が、こんなにも影響力があるという事が、実感としてはわからないのだけれども、基本的にソプラノズで描かれる彼らマフィアは、大変保守的な価値観を持っていて、この感じは多分、キリスト教原理主義に近いのではと感じます。

だから、と言ってはなんですが、割と平気で、人種差別やゲイ差別の発言が出て来ます。
でも基本的に彼らは、どうしようもない人間、として描かれているので、そういう事もあまり気になりません。

とにかくこのドラマに出てくる人たちは大変泥臭くて、自分なりの正義を貫くことで、家族や友人にとっての善良で愛情深く思いやりのある良いパートナーであろうと懸命に努力しているんだけれども、時に衝動や感情に振り回されて、非情にとんでもない事をしでかしてしまう、というケースが多々あるので、発言に問題がある程度では、観ている側もさほどギョッとしないわけです。


とにかく昨日の話では。

愛人に、死者と会話できる霊能者の所に行って、「3時」の意味を明らかにすれば、もう悪夢も見ないわよ、と言われたポーリーは、まずは罵詈雑言でその霊能者を馬鹿にするのですが、結局は助けを求めに行き、グループ・セッションの席でその霊能者がどんどん色んな事を当ててゆくことに、徐々に感嘆を感じ始めます。

そんな矢先におもむろにポーリーの前に立った霊能者が、ポーリーの背後に立つ幽霊と会話し始め、そしてその複数の霊の名前を告げ出すのですが、それが全て、ポーリーが過去に消した人々の霊だったからさあ大変だっっ!!

幽霊の怒りをポーリーに告げる霊能者、恐怖で暴れるポーリー。それを見て爆笑する私(笑)。。

結局のところポーリーの恐れは、癒されるどころか更なる凄みを増す結果となり、這々の体で霊能者のところを逃げ出します。そしてホッとする私。いや、いつもの流れだと、ポーリー、この霊能者を、その場で殺しかねないっすから。


まあ、そんな素敵なエピソードがいくつもちりばめられながら、それぞれを重要なファクターとしつつ、物語はより深刻な方向へと、どんどんどんどん流れてゆく。

それが、ソプラノズです。

まだまだ観ていない回が残っているので、また一日がうまく行った時、ホクホクしながら見続けようと思うのである。