2015年8月6日木曜日

パスカルズ欧州ツアー (1)



2015年7月18日から、パスカルズとしては比較的短い、10日間程度の欧州ツアーに行って来た。

このツアーを実施したいとフランスのプロダクションからオファーがあった時期、世界は中東を席巻するテロ集団による誘拐や非道な処刑騒ぎのまっただ中で、恐ろしい事態が全く人ごとでは無い状況に誰もが直面していたから、メンバーのスケジュール調整や予算立て等既に様々な困難を抱え、ただでさえ簡単では無さそうに見えるツアーに、更に凄みを増す条件が整っていた。だから始めはこのツアーにはあまり現実感が無かったのだ。

でも、なんだか結局行ける事になった。
そして個人的には、行けてよかったと思っている。

パスカルズはスタッフに至るまで個性的な集団なので、ひとりひとりの気持ちなんてまるきりわからない。だけど私個人は、個人としてとても旅を楽しんだ。

旅はパリのシャルル・ド・ゴール空港から始まって、今回はいきなり、そのままTGVでノルマンディー地方にあるレンヌまで行った。
レンヌというのは、パスカルズの、フランス・デビューの土地である。


去りし日、欧州のスターの登竜門とも云われている、あのビョークなんかも出演したトランス・ミュージカルズ・フェスティバルという、出演させてもらえるのは大変光栄ならしい名高い音楽祭に出してもらって、パスカルズはすっごく注目された。
"ムーン・リバー”のカバー・ソングはカレッジ・チャートで1位になり、あの有名なル・モンド誌からCDにお薦めシンボルまでいただき、いきなりスターの仲間入りをしたのである。

そんな幸先の良い土地からスタートした今回のツアー、実は今までに無いトラブルの連続だったのである。。。
しかし個人的には、とにかく素晴らしかった。

何が素晴らしかったって、まずはご飯が美味しかったのです。
(ご飯の話になると語調がですますになる私)

実は私、今までの欧州ツアーで、そりゃあ本当に美味しい物にも数々巡り会いましたけれど、基本的に、飯はまずい、という評価を、欧州に対して下していたんですね。

いや知ってますよ。
ちゃんとそれなりにお金を出して、ちゃんとそれなりの所へ行けば、相当美味しい物があるんだってことくらいはね。
だけどパスカルズ欧州ツアーの現実は、そうじゃないでしょ。

時間も無い。
選択肢も無い。
激しい移動と本番の連続で、知力も体力も心も無い。
そんな中、細々と出会う美味しい物たちは、総じて星の煌めきのような光を放ってはいたけれど、そんな経験、100回ご飯食べるうちの5回くらいじゃなかったかな、というのが、今までの私の感想なのである。

ところが!!!!!

今回のツアーではなんと百発百中!!!

パリのオフ日の遅い時間に、みんなが行ったインド料理屋に今一食指が動かず、集団を離れマネージャーのフィリップとふたりで、なんとなくおざなりに入ったカフェ・ビストロの鴨のコンフィでさえ、もう、絶品中の絶品だったのである!!

とりあえず、最初に出演したレンヌのフェスで食べさせていただいたお料理を、ちょっと紹介しましょう。


選べる前菜から私が選んだハムと野菜のクリームソース

選べるメインディッシュから私が選んだポークリブステーキ

こちらはディナーのメインディッシュ、私は鴨のコンフィを選択


これは苦手だから選ばなかったけど味見したらすごく美味しかった山羊のチーズの前菜

このフェスでは開催地の脇にレストランがあって、そこでの食事となりましたが、もう、何を食べても本当に美味しかった!
飲み物も、ワイン、ビール、シードルなんかから選べるんだけど、ワインはカラフィでたっぷり出てくるし、シードルなんてひとりに一升瓶一本で出て来るから、結局全種類シェアし合って飲み放題みたいになっちゃって、とっても豊か。非常に気分的にゆったりと出来ました。

私は私生活でも、どんなにボンビーな時でも、ケチる、ということは絶対にしないって決めているので、今回のツアーの食事関係の豊かさは、最近の私の生き様にも実にフィットしていたのであります。

このような、”振る舞ってもらっている”、という感覚は、実に心を凛とさせてくれるものですね。
きちんと手の込んだ、丁寧で美味しい物を、たっぷりと食べさせてもらうと、心はこう感じるのです。「私もそれにきちんと応えよう。」

いえ別にね、粗末な不味い物を食べさせられたら、雑な態度で生きますよってわけじゃあないんです。
単に体感として、無条件にキリッと現場に集中出来る自分を感じたなってわけ。

多分それは単に、交換条件とかGive & Takeみたいな、表面的だったり計算高かったりするアレでは無く、もっと深い所にある、生物学的エネルギー交換の原則みたいな物ではないかと思うのです。

100くれた物に100返す、というのは、健全で気持ちよくて対等な在り方だなと私は思います。もちろんこれは、100くれないなら100返さないぞ、とか、100しかくれない人に100以上は絶対返さないぞ、とかいう、がめついケチな発想から来る物では無くて、もう本当に当たり前にナチュラルな、自然の理みたいな物なんじゃないのかな、と思うのです。

最近私の人生には、100&100、200&200、1000&1000、100000&100000 !! などの気持ちよい人間関係や出来事関係が沢山表れてきていて、同時に、どちらかが多目に与える/貰うあるいは奪う、という様ないびつな関係性が、自然に消滅、淘汰されつつあるのを感じています。

食べ物、なんていう簡単な事ではありますが、その簡単な事が中々起こらないのが人生。しかししょっぱなこのレンヌで、とても気持ちの良い、気前の良い振る舞いを受け、私はなんとなく、とてもいい予感を、感じ始めていました。

このレンヌのフェスティバル、LES TOMBEES DE LA NUIT (宵の口)は、一件地味でささやかな街のお祭りみたいに見えるんですが、なんとフランスで1番とも言われている、大変評判の高いフェスティバルなのだそうです。

そう聞いて私が感じたのは、なんというか日本だと、1、2を争う有名なお祭り、なんて物にはお茶の間の有名人が出てたりして、フェス自体の特質が全く無くなってしまうんじゃないのかな、という偏見があるのですが、この祭りにはコアな大道芸人やサーカス団、パフォーマーなんかが出演していて、そしてなんとも趣向を凝らした演出が、あちこちで目を引いた、実に興味深い、文化の奥行きの深さを感じるイベントでした。
興味のある方は是非、公式サイトで様子を探ってみてください。

コンサートは、私にとってこれまた大変縁深い、バックミンスター・フラー デザインのバイオ・ドームを象ったテントの中で行われました。

実は私がパスカルズに入る縁となった人々と出会ったのは、そもそも私がアメリカで、まさにこのバイオ・ドームを再現して世界に広げようとがんばっているような人たちと、エコなプロジェクトに取り組んでいた事がきっかけだったのです。

そういう意味で私個人の歴史にとっても、まさかのバイオ・ドームの中でのコンサート!というわけで、とても象徴的な始まりだったわけなのです。

ドームには、雨の中溢れんばかりのお客様が来てくださり、とても感謝しています。(続)

ドームに入り切らず外で観てくださっているお客様

本番中

会場で目を引いたトナカイ、私が見た時は少女を乗せていました。


公式サイトより拝借の、何故かヨレヨレな感じのオレ写真