2015年8月16日日曜日

パスカルズ欧州ツアー(4)



今回は、オフに行ったジヴェルニーの事を書こうと思ったのだけど、あの小旅行はとても個人的な思い入れに満ちたものだから、パスカルズ・ツアーのカテゴリーとは別枠で書く事にした。

なので今回は、スイスのニヨンで開催された、パレオ・フェスティバルについてだ。

このとてつもない音楽フェスティバルの事を、私はまるで知らなかった。

そもそも私は、音楽については非常にマニアックに、限られたアーティストだけを深追いする感じで聴いてきたので、広範に様々なアーティストが出演する音楽フェス、というものに興味が無くて生きて来たから、私が知らないのも無理は無いのだけど。

でも、チケットが発売されたその当日に、実に25万枚もの前売り券が完売、実際に動員したお客さんが述べ27万人というのだから、ちょっとは知っててもよかったんじゃね?と感じる。

出演者も、エルトン・ジョンやスティングなど特に音楽ファンでなくても知っているようなメイン・ストリームのアーティストを沢山集めているのだし、もう少し日本でも認知度があってもいいのではないかと思うのだが、とにかく実に初耳のフェスだったわけです。

そしてとても素敵だった!

ツアー中のこの時点での私はでかい無気力の波に襲われていた為に、あんまりどん欲に見て回らなかった自分に腹が立つものの、その空間に漂っている空気感のようなものがとても快適で、私は今でも余韻を楽しめる程だ。

海外の音楽フェスは、とにかく空間演出が素晴らしい。
自然をうまく利用したライトアップや凝ったオブジェを駆使して、幻想的な美しい非日常空間を創り上げてしまう。

パレオ・フェス -メイン・ステージ脇


特に音楽好きじゃなくても、あの雰囲気に飲まれたい、って感じでリピートする人もいるのかもしれない。ワクワクするんだよね。

それからお金持ちフェス特有の、無制限感も好きだった。

アメリカのレストランは、よく言われているようにひとつのディッシュがでかい。日本人には、食べ切れないから困る、という人がいるけれど、アメリカ人だって、あれを食べ切るわけではない。

あれはあくまでも、豊かさ、制限の無さ、というゆとり空間をサービスする為の演出であって、だからアメリカのレストランはどこも、残した料理をお客が持ち帰れるように、箱やアルミホイルを常備している。料理を包んだアルミ箔で白鳥を作ってくれたりするって話は、昔私がエッセイにも描いたけれど。

個人が、あらゆることに制限を感じないで済む様に演出するのが、アメリカのサービスの基本精神にあると私は感じる。
だから、交渉さえすればどんなことにも臨機応変に対応してくれるのだ、あの国では。

一方ヨーロッパにはそういう空気感はあまり無く、どちらかというと制限を楽しむようなところがあるような気がする。
それはそれでオッケーなんだけど、私には時々窮屈なのだ。

だけど、欧州ツアー5日目に訪れたパレオ・フェスには、制限が無かった。

楽屋に設置されたバーに行くと、無料で色んなドリンクやサンドウィッチなどの食べ物をくれたり、ホテルと会場を往復するシャトルの待合室ーこれがまた南国風の素敵な空間なのだがーにいると、無制限にビールや色んな物が振る舞われたりする。

バックステージにあるバー

出演者、という立場でこのフェスにいたら、一生食べる物には困らないって感じだ。

しかも、このパレオ・フェスがパスカルズにあてがってくれたホテルの朝ご飯ブッフェは、ななんと午後2時まで朝食を振る舞っていて、その日殆どやる気の無かった私は朝6時からブッフェに入り、マジで午後2時まで、ずうっとぼーっとしていたのである。
ブッフェのレストランは風光明媚なテラスを持っていて、とても気持ちがよかったというのもあり。

湖とアルプスの山脈の見える朝ご飯テラス

ここのブッフェではジュースが四種類くらいあったのだが、そのうち杏のジュースがとても美味しかった。
そしてですね、ここのお客さん、ブッフェのカウンターからジュースを、なんとでっかい瓶ごと自分のテーブルに運んでしまうのだが、ホテルがどんどん補給してくれるので、私もふた瓶ほどテーブルに持ち込んで、全部飲み干しましたわ。ほーっほっほっほ!!

もうほんと、制限が無いって素晴らしいです。
私はどこまででも享受出来ますから!

豊かさ、という点については、アーティストへの対応にも感じられた。

パレオ・フェスのサイトに行ってみるとわかると思うんですが、多分あれ、出演者全員のステージの、コンプリート映像を流してるよね。
パスカルズのライブ中も、ステージ両脇の巨大スクリーンに演者のアップとか流してたらしいんですが、その映像を、私たちにもくれたし、サイトでも誰でも観られるようになっているんです。

メジャーなアーティストだけとか、ハイライトだけなどに絞らずに、全部の映像をアップ。
これは本当に豊かな、出し惜しみしないやり方だと感じました。

なんだかこのフェスで味わった豊かさの感覚が未だに心と全身に染み付いていて、飢餓感の全く無い自分を感じます。

だから今の私は、食べ過ぎたり買い物し過ぎたりコミュニケーションし過ぎたりしないし、基本的にすごくストイックなのです、ツアー以来。
これはおもしろい影響です。

まあそういうわけだから、欲深い政治家とかって、飢餓感の塊なんだろうね。太陽の暖かさで旅人のコートを脱がす話みたいに、本当の豊かさをあげれば欲深さが治るのかな、それとも心の根深いところまでは届かないかしら。


本番が終わって、もう夜の10時半くらいなんだけど、夕ご飯の会場に連れてゆかれました。そこもたっぷりの空間と、食べ放題の前菜サラダ・バーにデザート・ブッフェ、選べるメインディッシュの種類も豊富で、みんなとの食事がとても楽しかったし、私の選んだラムは絶品だったし、つまりはシェフのクオリティにも制限を課さなかったのだろうという感じで、もう何もかも本当に、私には合ってたよ!
ああいう現場で私は輝くよ! 贅肉も制限無くついたけどな!

バックステージの出演者用レストラン


あたくしの選んだラム、クスクスと茄子も美味しゅうございました


右隣にいた坂本さんが選んだチキン&クスクス
危険がいっぱいデザート・ブッフェ
左隣にいたマネージャー、フィリップが選んだパスタ。
ひとりでは食べ切れないくらい海老が入っていたそうです。


ところでこのパレオ・フェスでは、スイス国営放送がパスカルズの密着取材やインタビューをしてくれました。

私は通訳するので端っこにいます、と言ったのだが、石川さんがでか過ぎる、とか言われて私が真ん中になってしまい、多分番組では主役のようになっていることだろう。かたじけない。



主役っぽい私

それでこのインタビューが、いつ放映されたのかまだ追跡中なのですが、パレオ・フェス40周年おめでとう!の映像にも、この時の映像が使われています。

ちなみにこのおめでとうコメントで最初に出てくるのは、なんとあのレッド・ツェッペリンのロバート・プラント。。。現地で御本人にお会いすることは無かったのですが、御本人にお会いしてもわからなかっただろうの変身ぶりです。。


ところで実のところ、このフェスへの出演が決まった時、なんとなくマネージャーのフィリップがごり押しでパスカルズの席を作ってくれたんじゃないのかな、なんて疑いがありました。

でも終わってみると、パレオ・フェスは公式ブログでパスカルズの事を書いてくれたり、フェスティバルのベスト映像として誕生日コメントで枠を取ってくれたり、取材申し込みが多かったりと、かなり好かれた気配濃厚。

来年も是非誘っていただきたいものでございます。(続く)


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