2016年3月1日火曜日

モヤモヤしています

今、猛烈にモヤモヤしている。

でも原因がわからない。

さっき顔見知りのWさんに会った。

このWさんが、なんとなくいつも、モヤモヤした人物だと私は感じるのである。


実のところ、彼にそういう評価を下す人は、あまりいないだろう。

Wさんは行動派だ。

やりたい事をどんどん実現してゆく。

たったひとりで音楽オーガニゼーションを立ち上げて、やりたい企画をどんどん実現している。

ラジオ番組を持っていて、流暢な語り口で自分の好きな音楽をかけ、子供達を音楽に巻き込む為に色んなコンサートを実現している。

インディーズの音楽家たちを世界中から発掘して、自分の企画するコンサートに出演させてそれを自分の番組で取り上げたりしているから、きっと色んなミュージシャンから感謝もされているだろう。

コロラドでも有名なレッド・ロック・シアターで、今年も何かやるらしい。

そんな志や行動力は素晴らしいし、基本的にいい人間でもあるのはわかる。

思いやりもあって、親切な紳士だ。


でも実は。


私との相性は、絶対に悪いと思うのである。

相性というのは、性格の事では無い。
(Wさんの性格はまだよく知らないからわからないし)

なんか全体的に、住む世界っていうかさ、そういうのが、全く違うと思うんだよね。

「住む世界が違う」なんて言うと、どっちかが上流階級でどっちかがアンタッチャブルなのかよ、なんて極端な解釈をされると困るので言っておくけれど、そういう上下とかを言ってるんじゃない。

属性が違うっていうの?
そう、属性が、違うんだよね。完全に。
私は森の生物で、Wさんは浜辺の生物だから、一生会う事は無い、そういう間柄だと思うの。

私は今回、アメリカで沢山そういう体験をした。
今まで良しとしてきた関係性に間違いが見つかり、深まってゆく人たちと離れてゆく人たちが、はっきりくっきり、見えて来たのである。

好き嫌いとか、そういう事での区別ではない。
ああ、この人は遠いんだな、単にそんな風に、体感でわかるっていう、生物学的本能的な反応だ。

そしてそれはとても真摯な感覚だと私は思う。

失礼だとも冷たいとも思わない。

私は誠実に、ただそう感じるのだ。

私は本当に、真摯に人に関わっていると思う。


だけどWさんはさ。

いきなりアポを取って来て、割と強引に押し掛けて来て、勝手にツーショット撮って、勝手にその写真をSNSに投稿したんだよね、さっき。

で、投稿しながら、こう言ったの。
「Dが見るといいんだけど。」


Dというのは、私が親しくさせていただいている、ある有名シンガーだ。

Wさんは実は、今年行うレッド・ロック・シアターでのコンサートに、Dを呼びたいのである。
だから私に何度も連絡が来るのはわかるし、それがモヤモヤする理由ではない。

Wさんのコンサートへの情熱や意図は中々素晴らしい物で、アメリカでやっていた私のバンドの事も知っているから、私にも出て欲しいと言ってくれているし、そのイベントにDを呼んで欲しくて私に橋渡しを頼むのなんて、全然自然な事だ。

だからそれはいいんです。

いくらでも、橋渡しをしたいし、協力するとも言いました。

だから、Wさんが私と知り合いだという事を強調する為に私とのツーショットを撮り、それをDが見てくれたら話も早いのにと思っても全然構わない。

わざわざ、これ載せていい?とか聞かなくても、この場合は別にいい。

私のモヤモヤは、そこじゃないんですよ奥さん。


Wさんは私に今日、こう言ったのです。

「Dに出演を頼んだのだけど、なんていうか、アマチュア・バンドと共演なんか出来ないよ的な感じで断られてしまって。」

それを、非常に、非難めいた口調で、私に言ったんだよね。

Wさんは、プロやアマチュアという境界の無いコンサート世界を創りたいと思っている人物だ。

音楽を、子供、その親、プロ、アマチュアが、みんなで一緒に同じ現場で楽しめたらな、と思っている人物だ。

その為にレッド・ロック・シアターをおさえたのだ。

素敵な発想だし、確かに耳障りもいいよ。


だけどさ、「アマチュア・バンドとなんか共演出来ないよ」、と言ったプロのミュージシャンの言葉を非難するのは、ちょっと違うんじゃないのかい?


まずはっきり言って、Dはそういう事を言う様なタイプのミュージシャンではない。

生粋の芸術家肌だから、見た目や歌の雰囲気よりは、直接話すとやや気難しい印象があるかもしれないけれど、いつも人を、すごく純粋な気持ちで見ている人だ。

以前私に、感動の面持ちでこんな話をしてくれた事がある。

Dの娘がまだ小さかった時に、学校で仲良くなった親友シンディーちゃんの話ばかりするので、学校に娘を迎えに行った時に、「どの子がシンディーちゃんなの?」と聞いたそうだ。

そしたらDの娘は、「あの、ピンクのカーディガンの子。」と言って、みんなでブランコに群がっていた、ひとりの女の子を指差した。
そしたらその子は、黒人だったのだそうだ。

Dは、自分の娘が、「あの肌の黒い子」と言わずに「ピンクのカーディガンの子」と言った事で、子供には、肌の色の違いなんて、まるで目に入っていないんだ、という事に、衝撃的な感銘を受けたのである。

Dは私よりかなり年上だ。
Dの娘が小さい時代なんて、今よりもっと人種差別が激しかっただろう。
そんな中、Dは自分の娘の視点に深い感銘を受けて、その事をずうっと、何十年も心に生かし続けているのだ。

そんなDが、単なる蔑みの心で、アマチュアなんかと、なんて言ったとは、とても思えない。

そして例え言ったとしてもだね。

それは当たり前なんだよ!!!

プロとアマチュアの違いっていうのはなによりも、人目や厳しい精査の目に耐えて、それでも好きな事を貫いているのか、あるいはそういう事を全部避けて、傷つかずに済む、気楽な位置でそれをやっているのか、という所にある、と私は思う。

私は、どっちが偉くてどっちがダメで、とか言うつもりは全く無い。

だけど、自分の最も大切な創作物を、例えば心無い評論家に公の場で何度もこきおろされて、それでもそれを貫いている人々というのは、そこを通過していない人たちと、全く属性が違うっていうことを、知っていなければならないと、私は思うのだ。


Wさんが崇高な気持ちで、プロとアマの垣根を越えてさ、なんて言うならば、同じ様に音楽をやっているWさんこそがまず、プロの通過してきた道を尊ぶ気持ちを、持っていなきゃダメだと思う。

断られた事で卑屈になってDの事を悪く表現するなんて、もっての他だ。

そしてちなみに私は、何度かWさんに、おかしいな、Dはそういう事を易々と言う様な人じゃないんだけど、とさっきの会話の中で言ってみた。

するとWさんは、いや、必ずしも言葉でそう言ったわけじゃないんだよ、ニュアンスでさ、そんな感じだったんだ、と言ったのだ。

ニュアンス。

つまり、Dは断っただけでなんにも言ってないのに、Wさんがそう捉えたって事なわけ。


この、ヒガミ男がーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!!!!!!💢💢💢




あ、これだったんだ、私が怒っていたのは。


そういう経緯があっての、勝手にSNSに写真投稿だったから、私はモヤモヤしていたんだな。

というわけで、残念ながらWさんが投稿した写真は私のTLからは削除、Dの目には触れないようにさせていただきました。

私はDみたいな強くて純粋な人を、ヒガミ根性で影で悪口言う様な人間に関わらせる片棒を担ぐのは、まっぴらゴメンってわけだからよ。
ここは勘弁してくんな。

Wさんにもそう伝えなくちゃあ。

というわけで、モヤモヤの原因がはっきりしたのでこのへんで。