実を言うと私は、とてもTPOを重んじる人間です。
そのTPO感覚が、他の人や一般的な社会に適合しているかどうかは別として、私には独自のTPO感覚があり、常にそれを重んじて生きているのです。
西荻窪のアート雑貨店”ニヒル牛2"は、小さいけれどとても物語のあるお店です。
流行りの”古民家”なんて呼ばれる緩めのくくりを遥かに超えた、正真正銘の古い古い家屋の一角にあり、中に入るとそれはもう、ある種宇宙的な、骨董屋風空間が展開します。
でもその骨董屋空間を創ったのは乙女なので、ただの骨董屋じゃない、ロマンチシズムがあります。その小宇宙に、様々なアーティストが所狭しと個性的な作品を並べて、販売しているのです。
私が度々ブログやTwitterで触れる、ココマコムーンのビーズ作品も、ここで売っているのです。
そんな”ニヒル牛2”の一角で個展をやると決まった時、私の中のTPO感覚に凄まじい燃料がくべられました。
私個人には、私個人の、絵の方向性があります。
日本ではあまり見た事のある人もいないかと思いますが、私の絵は自然物をクローズアップにした半抽象画で、色彩とマティエールだけが売りの、シンプルな絵画です。
でもそれが果たして、”物語”のある"ニヒル牛2"に合うのか、私ははたと考えました。
年明け頃に"ニヒル牛2"に出していたトートバッグやTシャツのシリーズにしようかとも考えましたが。
なんかそれも、個展となると違う感じ。
そして、"ニヒル牛2"のオーナーあるくんとは、少女漫画ファンということで繋がっている感もある。
ということで、私は決めたのです。
私は、少女漫画家として、"ニヒル牛2"で個展をやろうと。
だから、物語を創りました。
それは、ある自然史学者のお話。
長年憧れていた伝説の森、"フォレト・ヌ"(夜の森)に、ひょんなことから迷い込んでしまった、ギュスタフ・アーレの物語です。
展覧会で展示されているのは、ギュスタフ・アーレの描いた絵と、彼の手記から抜粋された、作品の解説書です。
この展覧会はだから、絵画展ではありません。
絵画のみの単体では成立しない、物語の展示会なのです。
だから是非、絵のふもとに置いてある、解説書も読んでください。
そしてそういう事情から、今回絵の販売はありません。
その代わり、アーレの手記を販売します。
森に魅了されたギュスタフ・アーレの描いたスケッチと、森での生活を綴ったアーレの日記。
そして最後のページには、行方をくらましたアーレに代わって彼の作品と手記を私に届けてくれた、アーレの娘(自称)ノラの描いた不思議な絵画も掲載します。
今その手記は、私が一生懸命編集しているところですが、来週月曜日には、少なくとも見本だけでも会場に届けようと思っています。
皆様、ぜひ観にいらしてくださいね。
西荻窪ニヒル牛2(正午openー20:00close;木曜定休)にて。
6月3日まで。