2014年7月20日日曜日

モリーとのフライト


友人が沢山出演する、どうしても見逃すわけにはいかない音楽フェスがコロラドであったので、学校が終わってから飛行機に乗って、開催地に向かった。

デンバー空港からとても小さなプロペラ機に乗って、高地にある小さなヴィレッジへ行く、その小さなプロペラ機の中でのこと。

私は通路側の席に座っていた。通路を挟んで隣は空席、そして窓際の席に座っている女性を見た時、あれ?と私は思ったのよね。

友達で、そのフェスの出演者である、モリーじゃないのかな、と。

サングラスをかけているのだけれど、人間てやっぱり、外観だけじゃないね、なんとも言えない、その人の醸し出す何かがあるね。特にモリーは、いつも全身から、なんともスイートな、優しい、甘やかな、可愛い空気を醸し出している女性なのである。

典型的なブロンド美人ではあるけれど、もっと、もうひと味、見逃せない何かを持っている、素敵な女性なのである。ちなみに歌手である彼女の声はそれはもう、とろけるような深くて甘やかな歌声で、ずうっと、ずうっと、ずうーーーーーーーっと、聞いていたくなるのです。

そんな、紛れも無く"主役"の特性を持った彼女、サングラスをして、ヘンテコなモンペを履いて、その上にフード付きのトレンチ・コートを着て、そのフードを深々と被って飛行機の席で行儀悪く爆睡してても、なんだかすっごくきれいな存在がそこにいる、そんな感じがして、惹き付けられたわけです。

ほぼ間違いないな、と思った。

しかし、大きなサングラスのせいで、声をかけるにはもう一歩確信が掴めない。

そんな時、彼女も私を見た。

あろうことか、数秒感、見つめ合ったのです。

そして、うううっ、となった時、彼女の隣、つまり、私と彼女を隔てる通路側の席に、女性が座ってしまった。だから、そこで一瞬遮られたのです。

するとその女性が、またすぐ立ってどこかへ行ってしまった。

飛行機は30分くらい中々飛ばず、隔てる席の女性も何故か全く戻らず、狭いプロペラ機の中で、私とモリーらしき人物との間に隔たりは無い。

ああいうのって、なんなんでしょうね。
声をかけなさいよ、とかいう、人生からのお助けなんですかね。
それでもなんだかお互いに、声をかけずにいたんですよね。

痺れを切らした飛行機は(?)ようやく離陸することをアナウンスし、私とモリーを隔てる女性も席に戻り、私は実はすごくホッとした。

だってもう、葛藤しなくていいじゃん?

飛行時間は50分。
降りる時に、また葛藤が来るよな、などと恐れたりもしましたが。
席を立って、体がぶつかったり目が合ったりしたらどうしよう、なんて。

なんであんなに躊躇したのか、自分でもわけわかりません。
でもその時は、どうもそんなモードに陥ってしまったんですよね。

さて、飛行機は着陸し、私が足下の荷物を取り出そうともがいている間に、モリーらしき人物は先に通路を、出口へと歩いてゆきました。
私と前を歩く彼女の間には、ひとりしか人がいません。

だから、飛行機を降りる時にモリーらしき人物が機長に向かって、

「なんて美しいランディング!素敵だった!!」

と声をかけるのが聞こえました。

そのさえずるような声と、好感度の大変高いその言動に、私は初めて確信したのです。
やっぱモリーだね。

フェスが始まっても中々モリーに会う機会が無かったのですが、彼女の出番のあった二日目の終わりに、楽屋でばったり出会いました。
すると私の顔を見るなり彼女は、キャー!!、というモードになって、

「ねえっっ!私たちって、来る時同じ飛行機に乗ってなかったっっっ!?」

と。(爆

ここからは多いに盛り上がりました。

お互いに怪訝な気持ちを抱えながら、しかも時々見つめ合いもしながら、一言声をかける勇気が無かった可笑しさ。

ほんの少し何かが噛み合えば、きっと屈託無く声をかけられたんでしょうが、なんだかそれが起こらなかったんですよね。

だけどそんなだったからこそ、その後楽屋での私たちの盛り上がりは常軌を逸した程になり、興奮して周りの人に語りまくったりして、すっげえ笑ったし楽しかったから、良かったのである。

メデタシメデタシ。

0 件のコメント:

コメントを投稿