マンチェスターの宿の庭 |
のんびりと、紅葉世界一の異名を持つ、秋のヴァーモントへ行って来ました。
もっとも、のんびりしてたのは私だけで、一緒に行った友達は、片道10時間という道のりをぶっ通しで運転し続け、最初の目的地ストゥの村に着いた時には、紅葉だからってなんなのよ、ってな風情になっていましたけどね。夜もとっぷり暮れてたし。
ストゥの村 |
そんな友人がどう思っていたかは知りませんが、ヴァーモントはとにかく素晴らしかったです。
ストゥの村は観光地化されてもいたので、アーミッシュな雰囲気を味わえるかなという期待はやや裏切られましたが、自然を尊重する人々の暮らす村には、なんともゆっくり豊かな時間が流れていて、ただいるだけで心がふわーっと安らかになる感じが、大変幸福でした。
それに今回の旅、まるで誰かが草葉の陰でわたし達の話を聞いていて、欲しい物を全部あげようと頑張ってくれてるみたいだね、と友人と度々溜め息をついてしまうくらい幸運な出来事が頻発。
しまいには、もしかしてオレたちしぬんじゃね?的恐怖が襲ってくるほどのうまく行き具合でした。
中でも食べ物には恵まれていましたね。
東海岸ということで、またしても美味しいロブスターにありつけることを期待していたワタクシですが、ヴァーモントに関してそれは大きな誤解と判明。ストゥのどこにもロブスター屋なんてありゃしません。
それでも素晴らしいウッド・オーブン・レストランを見つけたわたし達は、そこで完璧な鴨料理を食べては有頂天となり、グルテン・フリーな食生活を徹底している友人は、グルテン・フリーとは思えないリッチなパンやケーキを出す店を見つけては舞い上がり。
ウッドオーヴンで仕上げた鴨料理。プラムソースで味付け。これで一人分。 |
そして友人から、東部名物ポップ・オーバーというパンの話を聞いて、一度は食べてみたいもんだと思っていたら、ヴァーモントでの最後の夕食に訪れたレストランで、「ランチに焼いたのがひとつだけ残っていたからあなたに。」とか言われて突然目の前に。
別にそのレストランの人は、わたしがポップ・オーバーを探し求めていたなんて知らないわけですが、あたかも"全てお見通しよ"的態度で、「ラッキーね。」とか言ってくださって大変シビレました。
手前がポップオーバー。奥に見えるパンは友人用のグルテンフリー・パン |
ポップ・オーバーは、シュークリームのシューとクロワッサンの間みたいなパンで、バターの風味たっぷりのクロワッサン生地が、さくっもちっなシューになっているというかなんというか、とにかく、大変わたし好みのお味でございました。
そして食べ物ラッキーのハイライトはなんと言っても、ストゥから次の目的地マンチェスターへ移動する途中の出来事でございます。
その日は朝から雨模様で、霧に包まれたなんとも荘厳で幻想的な紅葉の森をうっとりと車で走り抜けながら、わたし達ふたりは腹ぺこでした。
なんたって、大自然ばかりでお店が一軒も無いんですよ奥さん!
どうすりゃいいんだろうねオレたちはトホホ、などと話しながら、目を見張るような美しい湖と渓谷に出くわした矢先に、獲物を狙う鷹のごとく動体視力が著しく上昇していたわたくしの両眼に、一軒の可愛らしい山小屋が飛び込んで来ました。
運転していた友人は、美しい湖と渓谷にすっかり目を奪われていたらしくスカっとその前を通り過ぎてしまったのですが、わたしからの激しいブーイングを受け、そんな小屋あったかよ、とか言いながら戻ってくれました。
レストランなのかどうかも定かでは無かったその山小屋の扉をそおっと開けると、中はこんな内装で。レストランでした!やっほー!!!!
しかも一歩足を踏み入れた途端にわたくしの鼻がいち早く感知したのは、ここにはまさかのロブスターがある!ということでした。
メニューを見ると明らかにシーフード専門店の品揃え。
入り口に猟った鹿の剥製が飾ってあるくせに。
そしてありました!あったんですよロブスターが!!!
とは言え。
例え東海岸でも、ロブスターにはお味にピンキリがあります。
しかもそこでは、通常お安くても30ドル〜40ドルはするロブスターが何故か19ドルというお安さ。
これっておかしくね?よく見ると、 LOBSTERじゃなくてTOBSTERとか書いてあるバチモンじゃね?と心に一抹の不安が。
するとそんなわたしの繊細なハートを知ってか知らずか、地元民らしきお客さんがわたし達に、ここのシーフードは新鮮で最高だよ、間違いないよ、と声をかけてくれたんです。
すかさず注文する飢えていたオレ。
すると、ハサミはついていなかったけど、なんと結構大きな二尾ものボイルド・ロブスターが!!!
ロブスター・テール、スイートポテトフライ、コールスロー、溶かしバター、というコンビネーションもロックポートそのまま♡ |
しかもお料理の仕方が大変洗練されていて、ロブスターも新鮮で柔らかくてとってもジューシー。遠い昔、ボストン郊外のロックポートという海辺の村で、目の前で水揚げされたロブスターをボイルして食べさせてくれたあの思い出の味に匹敵する美味しさでした。
こんな山の中の一軒家がまさかシーフード・レストランで、こんな新鮮なロブスターを出してくれるなんてと、狐につままれる心境とはまさにこのこと。
オレたちって実はサリーちゃんで、エイっと星付きのステッキを振ってこのレストラン出しちゃったんじゃね?とマジで思ってしまったほどの幸運でした。
こんな風に食べ物の幸運に恵まれ続けたわたし達でしたが、もうひとつ、絶対に触れておかねばならない味がございます。
それはストゥのアップル・サイダー工場で飲ませてくれる、作り立てのアップルサイダーです。
こんな風にタンクから直接出試飲させてくれるんですが、これがもうあなた。
飲んだ瞬間、頭を鈍器で殴られたみたいなショックを受ける程の美味しさなんですよ!
あんな林檎ジュース、初めて飲みました。
ポップオーバー・ブレッドのことを教えてくれた友人もここの工場を訪れこれを飲んだそうなのですが、それ以来林檎ジュースを封印したほど、やはり大変感動したそうです。
これだけ飲みに遥々ストゥまで出かける価値があるくらい、非常に特別な林檎ジュースでした。
ここはまた林檎酵母から作るドーナツも名物らしく、みんなダース買いしてましたよ。わたしももちろん買ったがね。
その他にもこの旅では、たまたまオクトーバー・フェスタに遭遇して夜はパーティーに参加、朝はかわいらしいパレードまで見ることが出来て、本当に恵まれていました。
小さなヴィレッジのお祭りなので盛大さは無かったけれど、様々に工夫された演出が素朴で楽しくて、ちょっとパスカルズ初めてのフランス公演で行ったナンシーのクリスマス・パレードのことなんて思い出しちゃいました。
そう。
今回改めて感じたのは、やっぱりアメリカ東海岸の自然や雰囲気は、中西部とは全く趣きが違うということです。
中西部に住む人も言ってたけれど、東海岸の美しさはかなり繊細というか、微細な美なんですよね。
中西部がどかーーーんだとしたら、東海岸は楚々....という感じ。
まるでヨーロッパにいるみたいだな、と始終感じてましたが、地理的にももしかしたら昔は地続きだったのかもしれません。
一口にアメリカと言っても西海岸にはまた別の趣きがあり....しかし考えてみれば、「アメリカ」、なんていう概念は人間が勝手に括った国境ですからね。自然にしてみたら知ったこっちゃ無いですよね。あれだけの面積があるんですから、あっちこっちが全く違っていて自然なんですよね。
まあそんなわけですが、ヴァーモントは本当に安らげる土地で、実に離れがたかったです。普段ニューヨークなんか好きで度々行ってる私が、ヴァーモントの帰路にニューヨークに入った瞬間に、すっごく悲しくなってしまったほど。
オレの体は、やっぱり大自然に馴染む様に出来ているんだぜ。
ところで全体的にショップ数が圧倒的に少ないストゥとマンチェスターの村でしたが、一軒一軒は大変充実の内容で、狭い軒先を入ってみると、ものすごく奥まで広がった大きなお店だったりするんです。
特にマンチェスターに滞在中は、ショップの魅力をおおいに楽しみました。
マンチェスターから30分程の村にあったクリスマス・ショップ |
ストゥのアート雑貨屋さん入り口 |
そんなわけで初めてのヴァーモント旅は大成功。
0 件のコメント:
コメントを投稿